資料番号⑧潮流発電装置
この研究は1981年8月から開始され、1983年8月愛媛県今治市来島海峡において世界で初めて潮流エネルギーを利用した発電に成功しました。潮流は潮汐現象に起因するものですから、一定の周期で定期的に流れる性質があり流れの予測が正確に得られ、エネルギー回収の信頼性が高く、自然流から直接発電できます。
研究スタッフは、潮流は約6時間の半周期ごとに流れの方向が反転するので、流体のもつ運動エネルギーを有効に回転エネルギーに変換するため、流れの方向に関わらず一定の方向に回転する水車として、ダリウス形を選び研究を続け独自の円弧翼を開発しました。 この研究は、発案者で校友の今治地方国立公園協会長「赤穂義夫氏」ほか潮流発電研究会の方々から研究費を助成されました。展示品は3号機で1986年8月から来島海峡海底に固定され自動運転を続け、1989年1月に引き上げられたものであります。
開発の経過
工作技術センターが電気工学科から技術支援の依頼を受け、着手してからのものです。
1983年 5月 | NU-1 海上設置型ダリウス形水車潮流発電装置製作開始。 |
7月 | 完成後、愛媛県今治市大浜漁港に搬入現地組立。 |
8月 | 27日午後7時15分潮流発電による電球点灯。このニュースは新聞、テレビ等が報道。 また、毎日グラフが9・25・1983週間に掲載。 |
1984年 2月 | NU-2 海上設置型を海底固定型に改造すべく設計開始、4月製作着手、7月完成。 |
4月 | 水路実験用アルミ合金製円弧翼2種類製作。 |
6月 | 本郷の東京大学実験水路で実験。 |
7月 | 14日低床10トントラックで船橋校舎を出発、16日現地パトカー先導で大浜漁港に 到着。17日発電機部と水車部をクレーン車で取付。20日クレーン船に積み小島沖約 50mの位置にすでに設置されている、海底ベースプレート上に装置を固定。発電実験 を開始、28日の大潮で最高流速2m/S(4ノット)を計測。1ヶ月の実験後引き上げ 船橋校舎に持ち帰る。 |
1985年 4月 | 電気工学科から海上保安庁の灯浮標の電源として潮流発電を利用する案があり、設計を受託。 |
12月 | 長期実験用NU-3 の設計開始、翌年3月図面完成。 設計変更点は、回転部の軽量化。円弧翼の材質ステンレス製52kg×3枚=156kgを カーボンファイバ製10kg×3枚=30 kg(126kg軽量化)に、翼支持板の材質を圧延鋼 材製170kg×2枚=340kgをグラスファイバ製29kg×2枚=58kg(282kg軽量化)とする。 塗装は、長期(1~2年)実験に耐えられるよう日本ペイントの船底塗料とする。 |
1986年 4月 | 製作開始、5月モデル翼設計通り完成。6月実機翼、翼支持板完成、組立後動的釣合試験実施。 |
8月 | 25日低床12トントラックで船橋校舎を出発、26日到着しクレーン船に積み大浜漁港堤防の沖合い約100mの地点、水深14mに設置。すでに四国通商産業局長の許可で漁港に発電所(プレハブ小屋)が完成していたので、海底ケーブルを結線。実験は電気工学科の教員と学生により1989年まで実施。 |
1989年 3月 | 装置を海底から引き上げ船橋校舎に持ち帰る。 |
装置概要
型式 | NU-3 海底固定型ダリウス形水車潮流発電装置 |
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発電出力 | 5kW / 5ノット |
水車翼 | 直径 1.6m 高さ 1.6m 3枚円弧翼 材質 C・FRP 10㎏/1枚 |
水車回転数 | 60r / min / 5ノット |
発電機回転数 | 540r / min / 5ノット |
発電機 |
三相同期 電圧200V 電流14.4A |
増速機 | 1:9 遊星歯車式 |
寸法 | 直径 1.6m 高さ 4.2m |
全体重量 | 4,350㎏f |